サイトを直す順番を決めるとき、「どの記事を直すか」の前に、そのサイトの強みがどこにあって、何が詰まっているかを見ます。ここを飛ばすと、強みのない領域に労力を注ぎ、本当の詰まりを放置します。
結論から書きます。VRIO分析をAIにやらせると、サイトの「堀(他と差がつく源泉)」と「詰まり(詰まっている仕組み)」が1枚の表に出ます。VRIOは経営学の分析法で、資源を次の4つで見ます。
- V(価値):その資源は読者の役に立つか
- R(希少性):他のサイトに同じものがあるか
- I(模倣困難性):他のサイトが同じものを作れるか
- O(組織):その資源を記事と収益に変換する仕組みが回っているか
4つの○×を書き出すと、どの資源で戦えるかと、何が足りないかが同時に出ます。この作業は、サイトの構造を直す(大規模修正)前に行います。構造の作り直しも、カテゴリの設計も、どの資源を中心に置くかで組み方が変わるからです。
この記事は、散らかったサイトをAIで作り変えるマニュアルの「診断」の作業の1つです。
目次
この作業で決まること
この作業が終わると、サイトの中心に置く資源と、最初に手を入れる仕組みが決まります。
- 中心に置く資源:V・R・Iがすべて○になる資源。他のサイトが真似できない領域なので、ピラー記事やまとめ記事の中心にします。
- 最初に手を入れる仕組み:Oが×になった項目。資源はあるのに、記事や収益に変換できていない部分です。
人がやることは1つだけで、サイトの「使える資源」をAIに最初に渡すことです。資源の洗い出しが済んでいれば、○×の判定と、同じ○×を持つサイトとの比較はAIに任せられます。
前提:この記事の前に必要なもの
- AIに渡す4つの前提(戦略・今のデータ・判断の基準・禁止事項)が揃っていること
- 全記事の台帳がライブで取れること
- Search Console のページ×クエリのデータがAIから読めること
4つの前提については、AIにSEOを任せる前に渡す4つの前提で扱いました。台帳は全記事の台帳をライブで持つで作ります。
AIに渡すもの
- サイトの資源の一覧:記事のテーマではなく「資源」を書き出します。例として、特定分野の実務の記録、失敗した日の判断の記録、自分で動かしているツールのログ、自分が持っている立場(取材できる相手・使える環境)など。
- 全記事の台帳:どの記事が、どの資源を使って書かれているか。
- Search Console のページ×クエリ:資源が実際に検索流入を取れているかを確認するため。
- やってはいけないこと:この段階で記事を書き換えない。会社の資源と個人サイトの資源を混ぜない(後述)。
手順
- 資源を書き出す
サイトで扱っているテーマではなく、資源の名前で書きます。「サーフィン」ではなく「○年続けた海の記録」、「AIツールの紹介」ではなく「自分が運用で踏んだ失敗の記録」のように、具体の名詞にします。具体性が上がるほどRとIが上がります。
- 各資源に V・R・I・O の4列で○×を付ける
- V:読者が今も検索しているテーマか(Search Console の表示回数で確認)
- R:同じ資源を持つ他のサイトが少ないか
- I:他のサイトが短期間で同じものを作れないか
- O:その資源を記事に変換して公開し続ける仕組みが動いているか
- V・R・I がすべて○の行を取り出す
この行がサイトの堀です。ここに該当する資源が1つも無ければ、まず資源の洗い出しに戻ります。
- O が× の行を取り出す
資源はあるのに、記事に変換できていない部分です。ここが詰まりで、仕組みを作り直す対象になります。
- 「汎用情報」の行は Rが×になる
他サイトのまとめ、商品のレビュー、公開情報の要約などは、どのサイトでもRが×になります。この行は、堀の記事に内部リンクで添える位置づけに下げます。中心には置きません。
- 判定の結果を台帳に書き戻す
各記事に「堀の資源を使っているか」「詰まりの資源を使っているか」の印を付けます。あとで大規模修正・中規模修正の対象を選ぶときに読み込みます。
完了条件
- ☐ サイトの資源の一覧が1枚のファイルにある
- ☐ 各資源に V・R・I・O の○×が付いている
- ☐ V・R・I がすべて○の資源が1つ以上ある(堀の候補)
- ☐ O が× の資源が特定されている(詰まりの候補)
- ☐ 台帳の各記事に「堀/詰まり」の印が書かれている
実際に起きた失敗
2つの自分のサイトで、堀の形と詰まりの場所が完全に一致した
自分の2つのサイトに、別々にVRIO分析をかけたことがあります。1つはAIで運用する実録のサイト、もう1つはまったく違う分野のサイトです。市場も読者もテーマも違います。別々の戦略が出るはずでした。
結果は、資源の名前は違うのに、○×の入り方が同じ表になりました。V・R・Iがすべて○になる行は、どちらも「自分にしか書けない一次の体験」でした。Oが×になる行は、どちらも「その資源を記事と収益に継続的に変換する仕組み」でした。
ここで分かったことが2つあります。
1つ目は、サイトを変えても、強みと詰まりの源泉は変わらないということです。資源の源泉も、仕組みの詰まりも、同じ運用体制に紐づいています。新しいテーマを探しても、Oの詰まりが残っていれば、新しいサイトでも同じ場所で止まります。資源を増やす前に、Oを直す順になります。
2つ目は、具体性が上がるほどRとIが上がるということです。「サーフィン」や「AIツール」のように広い名前で書くと、どのサイトでも書けます。「その日の判断の記録」や「自分が踏んだ失敗」の粒度まで下げると、他のサイトには同じものがありません。資源を書き出すときは、名詞を細かくします。
勤務先の資源を個人サイトのVRIOに混ぜそうになった
資源を書き出すとき、勤務先の業務で得た知識や、勤務先でしか見えないデータを、個人サイトの資源の欄に書きそうになりました。実務で得た知見は希少性が高く見えるので、個人サイトの堀に入れたくなります。
ここは機械で止めるルールにしています。勤務先の資源は、勤務先のサイトのVRIO にだけ入れる。個人サイトの資源の欄に、勤務先で見た数値・取引先・業務の実例を書かない。VRIOの表を分けるときに、資源の出所をファイルの印で判定しています。
よくある質問
Q. VRIOは企業向けの分析では。個人サイトでも効きますか?
A. 使えます。個人サイトでは、競合サイトとの比較より、自分の運用体制のどこが詰まっているかを見つける道具としてOが効きます。V・R・Iで堀を確認したあと、Oの列が本題になります。
Q. 資源が思い浮かびません。どう書き出せばいいですか?
A. 1日の作業の中で、他の人には時間がかかるのに自分なら数分で済ませたことを書き出します。公開されていない記録、繰り返して身についた判断、自分だけが見ている数値などが候補になります。
Q. ○×の判定はAIに任せていいですか?
A. 判定はAIに任せられます。Rは「同じ資源を持つサイトが検索結果に何件出るか」、Oは「その資源を使った記事が過去30日に何本公開されたか」のように、数で判定できる基準にしてから渡します。
