散らかったサイトをどこから直すかを判断するとき、最初に見るのは数字です。ところが、同じ「クリック数」でも、どのツールから、いつ取ったかで値が大きく変わります。ここを確かめずに前月比を出すと、実際には横ばいの指標が「2倍近く伸びた」ように見えることがあります。
結論から書きます。AIにサイトの診断を頼む前に、渡す数字の「集計単位」と「鮮度」を1枚にそろえます。集計単位とは、その数字がどのツールの、どの範囲を数えているかです。鮮度とは、その数字が確定済みか、まだ動いている途中かです。
- 集計単位:Google 検索クリック数(GSC)/SEO 経由セッション数(GA4 Organic Search)/ストア全体セッション数(全チャネル合計)は、別々の数字として分けて渡します
- 鮮度:GSC と GA4 は確定までに数日かかります。月末より前に取った数字で前月比を計算しません
この2点を確かめずにAIに前月比を渡すと、AIは誤った差分を根拠に「ここが伸びているから優先」と判断します。診断の作業は、そこから全部ずれます。
目次
この作業で決まること
この作業が終わると、AIに渡す数字が、どの範囲を・どのツールで・いつ時点で測ったものかが1枚にそろいます。
AIが読む作業記録の冒頭に、用語の対応表と、取得日・確定状況の2行を書きます。前提のファイル群(戦略・今のデータ・判断の基準・禁止事項)のうち、「今のデータ」の中に置きます。
よくある失敗:ダッシュボードを開いた瞬間の数字をスクリーンショットで渡すこと。鮮度の情報が消えて、確定値と暫定値の区別がつかなくなります。
前提:この記事の前に必要なもの
- AIにSEOを任せる前に渡す4つの前提
- Search Console と GA4 のデータをAIが読める状態にすること
- 全記事の台帳(ライブで取れること)
AIに渡すもの
- 用語の対応表:「クリック数」「セッション」「訪問」が、どのツールのどの範囲を指すか
- 取得日と確定状況:対象期間の最終日から何日経ってから取ったか
- 前月比を出すときの決まり:確定値どうしだけを比べ、暫定値は比較に使わない
AIに渡すもの①:集計単位をそろえる対応表
「クリック」や「セッション」は、単体で書くと複数の意味に取れます。勤務先の月次レポートで、CFO 役の確認者から「ストア全体のクリック数か、SEO 経由のクリック数か」と質問が返った経験があります。確認する人の時間が、用語の曖昧さに吸われていました。
次の形で書き分けると、AIも人も同じものを指して話せます。
| 使う言葉 | 指すもの |
|—|—|
| Google 検索クリック数(GSC) | Google 検索結果からのクリックだけ |
| SEO 経由セッション数(GA4 Organic Search) | オーガニック検索から流入したセッション |
| ストア全体セッション数(全チャネル合計) | 全流入チャネルの合計 |
| 実売上注文数 | 確定した購入の件数 |
公式の仕様は、Search Console ヘルプ(検索アナリティクスのデータについて)と GA4 ヘルプ(Organic Search チャネルの定義)で確認します。「クリック」と単体で書かず、必ずツール名と範囲を一緒に書きます。
直さないとどうなるか:AIが「クリックが前月比+94%」という文を読み、「ここが伸びているから磨く順を上げる」と判断します。実際には SEO 経由のクリックは+35% で、残りはキャンペーンの一時流入でした、ということが起きます。
AIに渡すもの②:鮮度を書き添える
GSC と GA4 のデータは、月末を過ぎてもしばらく値が動きます。確定までのタイムラグは、GSC で通常3日ほどです。勤務先のレポート作成で、4月のデータを4月25日に取ったまま前月比に使った月がありました。4月の値が実際より小さく、前月比が実力より大きく出ました。
| 指標 | 月末前に取った値 | 月末から5日後に取り直した値 | 前月比の差 |
|—|—|—|—|
| Google 検索クリック数(勤務先サイトA) | 5,162 | 7,422 | +94.7% → +35.4% |
| Google 検索クリック数(勤務先サイトB) | 5,100 | 7,123 | +83.9% → +31.7% |
同じ指標でも、取得日が5日違うだけで、前月比の数字が倍近く変わります。横ばいの指標が「爆伸び」に見え、AIはそこを優先の根拠にします。
鮮度は、CSV のファイル名と、取得スクリプトの実行時刻で管理します。月末から最低5日経ってから取り直したものだけを、前月比の計算に使います。
手順
- 「今のデータ」のフォルダに、CSV のファイル名を「指標名\_対象期間\_取得日」の形式でそろえます(例:
gsc_clicks_2026-09_fetched-2026-10-05.csv) - 月の途中で取ったファイルは、月末から5日経ったあとに取り直し、古いファイルは別のフォルダに退避します
- AIが読む作業記録の冒頭に、用語の対応表を貼ります
- 前月比の表を作るスクリプトは、取得日が月末より前のファイルを読んだら処理を止めます
- 月次レポートを人が読むときにも、各数字の末尾に「GSC」「GA4 Organic Search」「全チャネル合計」のどれかを必ず付けます
4番目をスクリプトで止めない設計にすると、忙しい月ほど暫定値のまま前月比が出ます。処理を止める判定を、人の確認に任せません。
完了条件
- ☐ 用語の対応表が、AIが毎回読むファイルから参照されている
- ☐ CSV のファイル名に、対象期間と取得日が入っている
- ☐ 月末から5日より前に取ったファイルは、前月比の計算に使われない
- ☐ レポートの数字に、ツール名か範囲のどちらかが必ず書かれている
実際に起きた失敗
月末前に取ったデータで前月比を出し、+94% と報告した
勤務先の月次レポートで、4月の Google 検索クリック数を「前月比+94.7%」と書いた月がありました。4月のデータを4月末より前の日付で取ったまま、確定値を取り直していませんでした。
経営層から「この前月比は正しいか」と確認の質問が来て、取り直した結果、+35.4% が正しい値でした。もう1つの勤務先サイトも、+83.9% と出していた前月比は、取り直すと +31.7% でした。
原因は、月末を過ぎてもデータが数日動くことを、集計の手順に組み込んでいなかったことです。それ以降、CSV のファイル名に取得日を入れて、月末から5日より前のファイルは前月比に使わない規則にしました。
「クリック」と1語で書いたら、確認に時間が吸われた
同じレポートで、「クリック数が前月比+30〜35%」と書いた箇所について、確認者から「ストア全体のクリック数か、SEO 経由のクリック数か」「データの正確性を確認したい」と質問が返りました。
数字そのものは正しくても、ツール名と範囲を書いていないと、確認する人の時間が「何の数字か」の照合に使われます。報告書と作業記録の両方で、「Google 検索クリック数(GSC)」のように、ツールと範囲をセットで書く形に変えました。
よくある質問
Q. 月の途中で診断を回したいときはどうしますか?
A. 月途中の数字は「暫定値」とラベルを付け、前月比の計算からは外します。暫定値でも、順位帯の分布やカニバリの有無など、鮮度の影響が小さい判定には使えます。
Q. GA4 と GSC のクリック数が一致しません。どちらを使いますか?
A. 一致しません。計測の仕組みが違うからです。Google 検索結果からの流入を見るときは GSC、サイト内の行動と組み合わせて見るときは GA4 Organic Search、と目的で使い分けます。
Q. 用語の対応表は毎回貼る必要がありますか?
A. AIが毎回最初に読むファイル(Claude Code なら CLAUDE.md)から対応表を参照させれば、本文に毎回貼らなくて済みます。
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